Global Analysis

2014年5月課題概要

David Taylor 4月 2014

ローザンヌ国際動向分析5月号へようこそ。

本報告を全てお読みいただく場合でも、あるいは要旨だけをお読みいただく場合でも、この報告が大きな励ましと有益なものとなるように願う。私たちの目的は、戦略的で信ぴょう性のある分析、情報、考察を提供することを通して、読者の方が、リーダーとして世界宣教の働きのためにさらに備えられることである。現在と将来の動向および進展を分析することによって、読者とその関係者の方々が、神から任されたあらゆる働きを管理する際に、より良い決定を下せるようになることが私たちの願いである。

今号では次について報告する。食糧の安全保障と変換的開発における役割; WCC総会開催後の韓国教会の分裂の克服、および福音派のグローバルな協力関係の推進; スポーツ・ミニストリーと効果的な福音伝道; ナショナリズム、およびそれが福音派のミッションにもたらす問題。

食糧の安全保障について、Ravi Jayakaran氏(MAP International、 Global Programs、副部門長)は次のように記述している。「一般的に、食糧の安全保障に関わる問題は、福音への応答を決定する問題、またはコミュニティの健康を決定する問題のいずれよりも難しいこととして捉えられている。」しかし、健康および福音への応答は食糧の安全保障と密接に関わっている。食糧の安全保障は、変換的開発、特に長期的で持続可能な変換において、重要な役割を果たす。さらに、家族世帯における食糧安全保障の状況と、福音への応答が相関することは不思議なことではない。福音を伝えるということは、不可欠で全人的なものであり、貧しい人に対して「良い知らせ」を宣べ伝えること、そして同時に、「良い知らせ」を実践するということである。Jayakaran氏は次のように結論付けている。「それはクリスチャンである私たちにとって、私たちが関わるあらゆる働きにおいて、「良い知らせ」を宣べ伝え、実践することを可能とする、重要なミッションへの招きである。」

第10回世界教会協議会総会(WCCGA)が、韓国・プサンにおいて2013年10月20日から11月8日まで開催された。韓国準備委員会はWCCとエキュメニカル的に提携する韓国トンハプ長老派教会から支援を受けた。しかし、それはハプトン長老派教会を筆頭とした、強い反対を引き起こすこととなった。Bong Rin Ro氏(Hawaii Theological Seminary、 Church History and Missions、教授)は次のように記述している。「WCCGA開催後、韓国の教会はかつてないほど分裂する可能性がある。」しかしながら、WCCGAではエキュメニカル運動の重心は南側諸国の成長する教会に移行したと表明された。Ro氏は次のように結論付けている。「ローザンヌ運動が果たすべき役割の重要性は、今後さらに増していくだろう。WEA内の福音主義の諸教会と、WCCの神学と実践に相容れないWCC内の福音主義リーダーたちとの間に一致をもたらすために、ローザンヌ運動は貢献できるだろう。」

「分別をわきまえた人であれば、現代世界におけるスポーツの重要性を否定する人はいないだろう。」Stuart Weir氏 (Verite Sport、常務取締役)はこのように述べている。FIFAサッカー・ワールドカップが今年の6月から7月にかけてブラジルにて開催される。2010年のワールドカップは世界の全ての国と地域でテレビ放映された。スポーツ・ミニストリーは、大別して二つのカテゴリーに分類される-スポーツに対するミニストリーと、スポーツを通してのミニストリーである。近年、クリスチャンは、自国や出身都市で開催される大きなイベント、特にオリンピックやサッカー・ワールドカップについて、奉仕や証の機会が与えられる可能性のある場として捉えるようになってきた。クリスチャンがスポーツの世界に入るというスポーツ・ミニストリーを、キリストの栄光を現すモデルにしようとする時には、時間を失う、攻撃を受けやすい環境にさらされる、また、関わりを持とうとする意思力が問われる、といった点で多大な献身を必要とする。Weir氏は次のように結論付けている。「このことは、プログラム/イベント/『私たちのところにおいで』といったアプローチを時には強調することができる、他の福音伝道の分野に対して、ひとつの教訓となる。」

「国家主義者や愛国心といったものは、多国籍から成るチームをマネジメントする責任を持つ、教会または宣教団体のリーダーに対して、他ならぬチャレンジを与える。」Darrell Jackson氏(Morling College、宣教学、主任講師)はこのように述べている。とりわけ国家主義者は、事実上、世界中で見られる、均一化しようとする勢力に逆らって異を唱えるものである。賢明なチーム・リーダーであれば、愛国心や国家主義的な感情を中心として取り巻く「断層線(地震地帯)」のように、チーム内の白熱した議論に備えをするだろう。福音主義者は、時折、自国の政府と結束することを選ぶこともあるが、そうすることは必ずしも悪いことではない。しなしながら、倫理的な偏重や、政治的な優位性を意図するものであれば、国家のために協同することはできない。これは国家についての聖書神学を反映する考え方である。「クリスチャンのアイデンティティと忠誠心は、常にただキリストだけに対するものである。その他のどのような忠誠の形態も一時的で、いずれは廃れ、最終的には全ての国と民族の裁きの際に、意味のないものだと露呈するのである。」とJackson氏は結論付けている。

今年の3月、600人以上の代表者がキリストのためにベツレヘムに集まり、Checkpoint 2014に参加した。Checkpoint 2014という会議は3回目の開催であり、イスラエル-パレスチナ紛争という文脈において、「イエスだったらどうするだろう?(What Would Jesus Do?)」ということが問われる会議であった。福音主義のクリスチャンがどのように対応すべきかについて、神学および政治の広範囲から演者が論じた。Munther Isaac氏およびAlice Su氏によれば、「これまでクリスチャンは最も強力にイスラエルの政策を支持してきた。しかし、この会議によって、福音主義のクリスチャンがパレスチナ側の話と神学的な考え方を多く受け入れており、よりバランスの取れた受け入れ方ができるように求めているという事実が、浮き彫りとなった。」会議では、「神の国についてのイエスの教えを携えて、責任を持ってイスラエル-パレスチナ紛争の解決の支援に従事できるように、福音主義者をチャレンジする」ことを追求した。イエスに付き従う者であれば、平和をもたらす者となるために、自身の召しを真剣に捉え、前向きに取り組むべきである。彼らはこのように結論付けている。「もし多くのクリスチャンがこのような姿勢を育み始めるならば、中東で待ち焦がれている希望というものを私たちは見ることができるだろう。」

この報告に関するご質問、ご感想を、どうぞanalysis@lausanne.orgまでお送りください。次号のローザンヌ国際動向分析は7月中に発刊されます。

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