世界の仏教徒数の概算は、3.3億から10億人である。大方の調査では、仏教徒は世界人口の約6%を占めることが示されている。キリスト教と比較してとても少数でありながら、仏教は世界的な宗教であり続けてきた。
「西欧仏教」や「世界仏教」という言葉は、仏教が祖国のアジアを離れて世界に拡大していることを表している。西欧において仏教が急速に拡大したのは1960年代であった。このことは1959年にダライ・ラマがチベットから退いたこと、その後、世界を舞台に乗り出したことにも、一部原因がある。併行して、多くのチベットのラマ教僧侶や避難民が西欧諸国に居を構えるようになり、布教の拠点を築いた。また、欧米人は1960年代のヒッピー運動やビート族が理想とするものと、禅教との間に共通性を見出した。
今日、西欧における仏教団体には、指導/リトリート・センター、出版社、研究会、瞑想グループ、ホスピス、書店、そして訓練センターが含まれ、数多くの伝統や系統がある。アジア仏教と西欧仏教は今日、異なった様相を示している:「移民仏教 (immigrant Buddhism)」、「変化仏教(convert Buddhism)」などという話題も存在する。折衷主義やアンビバレンスは後者で一般的である。自己定義された西欧の仏教徒は、多くの場合、自身を(仏教における)複数の慣習と、時には、複数の宗教と結びつけることもある。
受容の速さは前例がないほどである。アジアでは仏教が確立するまでに何百年、あるいは千年もの月日を要したのに対して、いくつかの西欧諸国では10年足らずで仏教が定着した。
仏教は変化しやすい形に姿を変え続け、社会参画仏教、フェミニスト仏教、黒人仏教、同性愛仏教などがそれに含まれる。仏教は今では故郷であるアジアを離れてしまったため、現地の文化的影響に晒されている。仏教は、その存在においては実に世界的に拡大しているが、もし歴史から学ぶことがあるとすれば、地方レベルでは、今後状況に合わせて変化し、文脈化していくだろう。
このような急速に成長する仏教の性質ゆえ、他国に拡大するという点、そして、様相が「変化」するという点で、福音主義キリスト者は、西欧の仏教に留意すべきである。これらの多くが元々、キリスト教背景からの改宗なのである。その多くはキリスト教に幻滅した元クリスチャンであり、教会で虐待された者、教会から援助を受けられなかった者、仏教の方がより強い知的刺激がある、または、より重要な儀式的意義があると主張する者である。
福音派は、西欧仏教について宣教の新しいフロンティアだと呼ぶことができるが、慎重に考慮すべき知的、牧会的課題を伴うだろう。このことは、仏教や世界の宗教の中だけでなく、欧米におけるニューエイジや新興宗教、ネオペイガニズムの信奉者の中で尽力している宣教実践者との対話によって最も良く知ることができる。西欧仏教の信者の社会学的、文化的な特色は、そのような宗教の信奉者のそれと共通している:すべて折衷的な信仰、行い、そしてアイデンティティ形成を受け入れる傾向がある。
西欧仏教では、教義や信仰に対する興味は薄く、「行い」により強い関心がある。従って、クリスチャンは「行い」について話題にする必要がある:日々聖書を読む習慣、黙想や祈り、正餐式への参加、などについてである。多くの福音派は儀式的な行いを警戒するが、西欧仏教の信者の多くが引き付けられるのは、まさに儀式的行いなのである。
西欧仏教の信者に対する宣教的取り組みに関する考察は、タイ・パタヤで開催されたローザンヌ・フォーラム2004における課題グループ16から引き継がれている。これは、Lausanne Occasional Paper 45の‘Religious and Non-Religious Spirituality in the Western World (“New Age”)’(「西欧世界における宗教的および非宗教的精神性(『ニューエイジ』」))の中で表明されたが、これは西欧仏教に対する宣教的取り組みの旅を始めるに当たって良い出発点である。