Global Analysis

2013年11月 課題概要

David Taylor 11月 2013

ローザンヌ国際動向分析11月号へようこそ。

全文をお読みになる方にも、あるいは要旨だけをお読みなる方にも、今号が興味深く、有益なものであるようにと願う。本誌の目的は、戦略的で信ぴょう性ある分析、情報、考察を配信し、それによって、読者がリーダーとして世界宣教の務めのためにいっそう整えられることである。現在及び将来の動向及び展開の分析を通して、読者とその同労者の方々が、神から託されたあらゆる務めの管理について、より良い決定をすることができるようにと願っている。

今号では、いくつかの時事問題を取り上げる。6月にソウルで開催された、画期的な「アジア教会リーダーズ・フォーラム」から何が生まれたかを分析し、その前週にバンガロールで開かれたグローバル・リーダーシップ・フォーラムにおける主要テーマの1つであった、宣教としてのビジネス(ビジネス・アズ・ミッション=BAM)を取り扱う。この他、BAMに関連するトピックとして、私たちが消費者としてどのように行動するかに関わる、受託管理と正義の問題についても探る。3月号の記事の続編として、中国における様々な思想の動向と、それに対するクリスチャンの応答について、最近この問題に関して開かれた会議の結果を分析することを通して考える。最後に、現在の騒乱と迫害のただ中にあって、中東におけるクリスチャンにはどんな展望とチャンスがあるかを見ていく。

2013年6月にソウルで開催されたアジア教会リーダーズ・フォーラム(ACLF)の始まりは、普通の国際会議と代わり映えしないように思われた、とEzra Jinは記す。「しかし、中国の家の教会の代表者たちにとって、これはきわめて意義深い会議となった。中国の代表者は、2010年にケープタウンで開催された第3回ローザンヌ世界宣教会議に出席できなかったという深い悲しみを抱えていたが、それはあらかた拭い去られた」。ACLFの影響は様々な領域で感じられることになろう。殊に、中国の教会に具体的で明確な方向性を与える「2030ビジョン」は、世界宣教のために資源と熱意を動員しようとするものだが、そこにおいてもACLFの影響が表れるであろう。

この2年間、中東のあちこちで暴動が起きており、これにより起こっている変化のプロセスは、今後数世代にわたり影響を及ぼすだろうとWafik Wahbaは記す。この変化の恩恵を受けたのは、主としてムスリム同胞団である。しかし、イスラム教主義者の思惑には限界があることが明らかになりつつある。一方、この20年の間に「キリストを信じるイスラム教徒が大幅に増加」してきている。かつてイスラム教徒だったクリスチャンは、現在、中東地域のほぼすべての国に推定500万人いると言われる。彼らは厳しい迫害に直面している。「しかし、彼らが堪え忍び、忠実に従っている姿は、福音の卓越した証しである」。中東のクリスチャンの迫害はまだまだ続く可能性があるが、教会はますます強くなり、その証しはますます大胆になるだろう。世界教会は、こうした兄弟姉妹のために熱心に祈り、彼らのかたわらに立ち続けなければならない。こうした兄弟姉妹こそ、何世紀にもわたり、騒乱と迫害のただ中にあって信仰の灯を燃やし続けてきたのだから。

ビジネス・アズ・ミッション(BAM)は用語としては新しいが、その基礎になるコンセプトは決して新しくはない、とMats Tunehagは記す。BAMとは聖書に書かれた真理と実践の再発見である。神が私たちに与えられた最初の委託は、被造物についての委託(創世記1-3章)である。これには、仕事において創造的であるべきこと、つまり富を創出することも含まれる。「クリスチャンとして、私たちは富の分配に目を向けがちだが、そもそも富が創出されていなければ、分配することもできない」。事業をしている人々がプロ意識と卓越性と誠実さをもって、その召しを実践できるように、私たちは彼らを支持し、励ます必要がある。BAMはマーケットプレイスにおいて、小さいながらも成長しつつあるクリスチャンの世界的運動であり、ビジネスを通して神に仕え、公益に資することを追求している。BAMは社会の変革を旨とする。おのずと公式経済の構築にも関わることになる。Tunehagは最後にこう述べる。「BAMは数世代にわたる問題だ。それは他の社会変革運動と同様である。私たちはまず舞台を整え、今の世代に仕えたい。それによって、今後何世代もの人々が祝福を受けるようにと願う」。

私たちの家庭、仕事場、店、市場は、世界中で作られたものにあふれている。しかし、買い物をする時に、その向こうにいる作り手のことを考えることはあまりない。「今の世界は国際化しているので、日常の買い物を通じて、外国の人々のことを思いやる機会に恵まれている。彼らの労働環境を知ったり、製品の作り手を助けることにつながるようなものを買うだけでいいのだ。」とCarrie Ngangnangは記す。収入の十分の一を神に献げるのは、私たちの持てるものすべては神からの祝福であることを認め、感謝するための一つの表現方法だ。しかし、残りの90%をどう使うかについては、あまり考えないのではないか。だが、これも受託責任の問題である。Trade as Oneや国際飢餓対策機構といった団体は、国境を超えて思いやりを示すような仕方でお金を使うようにと、消費者に奨励している。「イエスに従う者は、国際的に人々を思いやることを追求するような仕方で買い物をすることによって、世界中の復旧作業や、土地と人々の回復に参画することができる。」とNgangnangは結論づける。

2013年8月、6th Annual Forum for Chinese Theology(第6回年次中国神学フォーラム)が開かれた。「現代中国におけるキリスト教信仰と思想の動向」をテーマに、中国及び全世界からクリスチャン、儒学者、左翼主義者、リベラル学者の重立った人々がオックスフォードに参集した。この会議は2つの重要な成果を生み出した、とTom Harveyは記す。第1に、「Oxford Consensus 2013」において、参加者は相互に敬意を払いつつ、共通の問題意識を持って、中国及び世界が直面する様々な課題に取り組むために協働することが約束された。第2に、この会議を通じて、市民社会に影響を与えている諸問題に取り組むために世俗の学者たちと対話をする際、世界的キリスト教は有効であるという気づきがあった。「この会議は、キリスト教信仰、思想、市民社会の相互関係の理解に向かうための重要な一歩となった。また、中国及び欧米諸国から参加したクリスチャンのリーダー、クリスチャンでない学者、組織のリーダーの間に重要なつながりが形成された。」とHarveyは結んでいる。

今号についてのご質問及びご意見は[email protected]宛にお送りください。次号のローザンヌ国際動向分析は2014年1月発行の予定です。

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