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ヨーロッパは、世界宗教としてのキリスト教を育んだ地です。それだけに、宣教地として最も努力を要し、戦略上重要な地となっています。ヨーロッパ大陸は福音に深く根ざした地と言えますが、また同時に福音への拒絶も根深いのです。そのような地で、何が希望となるでしょうか。ヨーロッパは、全大陸の中で最もキリスト教化された地ですが、無神論や合理主義、ヒューマニズム、政教分離主義、実存主義、共産主義、そして「不信仰」そのものをも、世界の果ての隅々まで届けました。私たち福音派は、よく死角を作ってしまい、ヨーロッパの見方を歪めてしまいます。クリスチャンは、聖書とイエス様についての証が極めて大きな影響力を持ってヨーロッパの過去を形づくってきたということに気づきましょう。過去をしっかり見ることができないならば、未来を見る目も近視眼的となり、将来像は奪われていってしまいます。神様の目指す将来に関して信仰を保つために、神様が歴史を通じてどのように働いてこられたか、特に少数の信仰深い人々を通してどのように働いてこられたかを理解する必要があります。比較的最近のこととしては、ヨーロッパを「キリスト教的価値観に深く根ざした人民の共同体」として捉える見方が、現在の欧州連合(European Union,EU)の母体を設立する原動力となりました。しかし私たち福音派はそういったことに関して傍から批判的に眺めているようなことが多すぎるのではないでしょうか。また、私たちはそれぞれの国家や教派に縛られた見方を脱する必要があります。多くの場合、福音的なリーダシップの訓練についても、狭く考えてしまっています。「クリスチャンのリーダーシップ」というと、地域教会の牧会に関することを意味してしまいます。政治的、経済的、他、様々な領域におけるリーダーとなりうるクリスチャンを訓練する場はどこにあるのでしょうか。私たちは時々、巷に出回っている「ヨーロッパがどんどん背教に向かうことが神の計画だ」などという終末論の一種に影響されて、ヨーロッパの未来を造っていく責任を忘れ、悲観的な態度や、無関心な態度をとってしまうことがあります。イエス様についての証が極めて大きな影響力を持ってヨーロッパの過去を形づくってきたというならば、未来においてもそうならない理由があるでしょうか。「神様に喜ばれるヨーロッパはどのようなヨーロッパだろうか」と自問してみましょう。教会においては、どのようなヨーロッパの将来像が説かれているでしょうか。また、私たちはどのようヨーロッパの将来像を提示していくことになるでしょうか。ヨーロッパは現在、深刻な、経済的、また政治的、社会的、宗教的、そして環境的な危機を通っています。このような状況により、ヨーロッパの教会の宣教計画は作り直しになるはずです。というのも、このような困難な状況は、信仰者にとっては思いやりと憐みの心で応答していく無限の機会をも生み出すからです。周りを見ながら、私たちが生きる場所にはいろいろな違ったヨーロッパ人がいるということもおぼえておきましょう。「受肉宣教(Incarnational mission)」という言葉がありますが、これはイエス様が私たちの世界に入って来てくださったように、私たちも教会の外の人々の世界に入って行く、という意味もあるでしょう。それによって、欧米で標語にもなっている、多くの「新しい教会のあり方(fresh expression of church)」が生まれていくということになるでしょう。正直なところ、ヨーロッパで最も努力を求められているのは私たち、普通のクリスチャンたちではないでしょうか。私たちはよく、神様の王国中心の生き方というよりは、教会中心の生き方になってしまいます。イエス様はご自分の御心が地において、ヨーロッパにおいて、生活の全領域において成されることを望んでおられます。主の弟子であるクリスチャンたちが全く変えられ、キリストの体である教会が全く変えられるとき、ヨーロッパも全く変えられ始めるでしょう。神様が何をなされているかを知るために、ヨーロッパに対して、現代に対して、また一つ別の見方をしてみましょう。「良い麦と毒麦」はいつも一緒に育つものです。「良い麦」の方に焦点をあてて、希望や信仰、そして荒廃の中での将来像を探しましょう。神様のヨーロッパに対する計画は終わってなどいません。私たちの希望は、周りの状況や流行には基づきません。クリスチャンの信仰は全て、十字架の死と復活、それだけにかかっています。背信が起こり、信仰の復興が起こる、というのを何度も何度も繰り返していくのが信仰の歴史なのです。神様の用意する将来を携えた、希望の民として、私たちは期待を持ってその日起こっている危機を見つめましょう。歴史の主である方が、ヨーロッパや、もっと広い世界についてのご自身の計画を、どのようにして成就させるかを見ようではありませんか。

ジェフ・ファウンテン。ニュージーランド生まれ、1975年よりオランダに居住。ユース・ウィズ・ア・ミッション(YWAM)のヨーロッパ理事として20年間従事したのち、シューマン欧州研究センター(Schuman Centre for European Studies)を設立。著書に”Living as People of Hope”(希望の民として生きる)、"Deeply Rooted"(深く根ざして)などがある。